ゲームのニュースライターから見た「うれしい」プレスリリース

 「2年費やしてSteamでリリースしたゲームは初週で10本も売れなかった」という記事が大きな話題となりました。ここで改めて見つめられたのが、「インディーゲーム開発者がプレスリリースに何を書くか」という命題です。

 作る側だけでなく書く側としても深く考えなければならない問題だと思い、ビデオゲームのニュースを書く側の人間からみた「こういうことが書いてあるとうれしい」と思うプレスリリースについてお伝えしようと思います。

 筆者は普段ゲームのニュース記事などを書く仕事をしており、インディーゲームの発表や発売のニュースを書くことも多いです。商業ライターとしては2年と半年ほどの活動で、まだまだ駆け出しですね。勉強の最中です。

 なお、このブログはフリーランスライターポル之助の意見であり、ほかの個人や団体の意見を代弁する物ではありません。と、きちんと断っておきます。
(追記)本稿は、「これがなければ箸にも棒にもかからない」、「全員がこうしなければならない」といいたいわけではなく、あくまでプレスリリースを書きたいけれど何を書けば良いか見当もつかない方へ、「白紙を埋めるにはこういう手もある」ことをお伝えするものです。

3月2日追記:ゲームライターコミュニティーというサイトに、「書くのが簡単で、もらってうれしいプレスリリースの書き方」という記事が掲載されました。こちらの方が実際に書く側に立って書かれているので、そちらも参照してみてください。

ペン

 筆者はゲームを紹介するとき、プレスリリースをそのまま書くことはありません。Steamのストアページの記述や動画、作者の方のTwitterやブログからどんなゲームか可能な限りかみ砕き、それを伝えたいと思っています。「だったらプレスリリースは必要ないだろ」と言わないでください。記事を書くときの大きな助けになっています。

 発売前のニュースを書くということは多くの場合、「ゲームの内容が文章や動画からしか読み取れない」というのが大きな特徴です。また、じっくり時間を掛けることが難しいスピード重視な記事でもあります。

 そんなニュースを書く筆者から見た「こういう情報があるとゲームのことを伝えやすい」というお話をしたいと思います。はじめにサクッと欲しい情報を挙げます。欲しいものは以下の3つです。

・ゲーム内容

・動画

・作者について

ゲーム内容

 なんといっても重要なのはゲームの内容。なんですが……ここはかなり難しい上に、ゲームによって大きく異なるはず。ゲームを一言で説明できるキャッチーな言葉があると書く側としてはとてもありがたいです。ない場合でも見つけやすいゲームもあります。

(追記)キャッチコピーは「ここがゲームの売りだ!」と一言で説明する言葉です。「アクションゲームは数あれど、我がゲームを選ぶ無二の魅力がある!」とキャッチコピーで自信を持っていえるなら、きっとプレスリリースも楽しんで書けると思います。でも、そういうのがないことってたくさんあると思います。そんな時は、自分のことを振り返ってみましょう。詳しくは下記「作者について」をご覧ください。

 また、ワンプレイの流れが分かるとさらにありがたいです。ジャンルとして形式化されたものであればなんとなく分かることもありますが、作っている本人に説明して頂けていると自信を持って書けます。動画でも代用できますね。

 興味を引くゲームの説明ができると、Twitterでの受けも良くなります。バズがすべてではありませんが、広く知られるためには積極的に狙って行きたいです。

 2020年にリリースされたインディーゲームの中でも最大の話題作のひとつ『天穂のサクナヒメ』の作者であるなる氏は、「米は力だ」のキャッチコピーがゲームを世に広める一因になったことを振り返っています。

 こうした言葉はゲームの内容自体を変えることはありませんが、(開発の一貫した指針として大きな力を持つ場合はあります)大ヒットの切っ掛けのひとつとなることはままあります。

 最近紹介した『SCHiM』は、個人的にもかなり手応えのある結果を残せました。スタイリッシュなグラフィックと、公式で用意された何をやるゲームかわかりやすい動画が原動力になりましたが、「子供の頃、帰り道でよくやったあの遊びがゲーム化」という説明も人を引きつけられたかな、と考えています。
 ホラーゲーム『TORMENTOR』も同様で、「処刑を実況配信」や「理想の監獄を作る」というキャッチーさが受けたかな、と思います。

 こういったツイートは編集さんと考えます。が、ここで紹介しているものは筆者の提案がほぼそのまま通った……はず。

動画

 前項に少し話を出しましたが、動画はゲームの内容を伝えるにも、Twitterでバズを狙うのにも有効です。有料ゲームではありませんが、『Blocky Dungeon』も動画の力を借りてたくさんのRTを頂いたゲームでした。

 こちらは筆者が動画を撮影しています。動画を作る際に気をつけるのは、ゲームの内容が分かること、そして30秒以内に納めることです。気持ちとしては15秒ほどにまとめたいと思って切り取っています。

 動画形式はmp4、1280×720、10mbほど以内だとありがたいです。YouTubeにアップロードするなら4KとかフルHDとか画質にこだわった方が良いと思いますが、Twitterなら美麗な動画を紹介するのは難しいです。

 ただ、Twitterの性質上動きが激しすぎると、ビットレートが足りずノイズだらけになる場合があります。知識に乏しく回避方法は分かりません。Post Voidの動画はどうしてもノイズだらけでどうにもなりませんでした。ゲーム内容と要相談ですね。

 動画の方針として、かっこよく良いシーンをつなげるよりワンプレイの流れが分かる方がいいかなと考えています。ゲームにはどうしても言葉より動画で説明した方がいいものがあり、文章を補足することを意識しています。(スピード重視でもあるので、あまり凝った動画にできない……というところもあります。)

作者について

 「ここがゲームの売りだ!」というものが思い浮かばないこともあると思います。「アクションゲームは数あれど、我がゲームを選ぶ理由がある!」と自信を持っていえない、ほかのゲームにない売りが思い浮かばないこともあるでしょう。

 ほかのゲームと差が見当たらないなら、作っている人に焦点を合わせる手もあります。あなたの国籍や出自、好きなこと、ゲームを作った理由、ゲーム開発で困ったことなどなど、プレスリリースにはそういうことも書いて頂けるとありがたいです。私の場合、製作日誌があるときはそちらに目を通すこともあります。

 今までこういうゲームを楽しんできて、自分でもその愛を表現したくなったとか、アート出身だけどほかにない表現の場としてビデオゲームを選んだとか、はたまた「10年間引きこもったけど、実は海外では日本のHikikomoriが注目されているらしい。そこで引きこもりをセールスポイントにしたゲームを作った」(参考:『ぷるすてい』)とか。

 かわいいソウルライク『リトルウィッチノベタ』の作者さんは「ゲームの開発はもう三年近く、その間作者の収入はほとんどありません、なので早期アクセスを採用してゲーム開発をサポートするつもりです。」とリリースに至った経緯を語っています。こういうものもゲーム開発の裏を知る良い情報です。そういえば、本作も「ロリダークソウル」というキャッチコピーが本作を広める切っ掛けになりました。おそらく本家と混同を防ぐため、現在は公式では使われていないと思います。

 また、『アンリアルライフ』の作者hako 生活さんは、公式サイトでゲームを作るうえで影響を受けた作品を列挙してくれています。(ただしネタバレ注意)作品を知る上で影響を受けた作品が分かるのも、ゲームを作った作者の人となりを垣間見る良い情報になります。

 ゲーム開発はしんどい作業だと思います。場合によっては何年もコツコツと積み重ねなければなりません。ゲームを楽しむファンは、ゲームを作った人の情熱の原動力を知りたいものです。

 ただそこにゲームがあるだけより、「こういう想いを抱えた作者がどういう経緯を経てこのゲームを作るに至った」という物語がある方が応援にも力が入ります。「頑張ってるアピールをしよう」だと元も子もない書き方ですが、作品を作る理由にこそオリジナリティが表れることもあるでしょう。

最後に

 筆者はただのフリーランスライターで、独自のメディアを持っていないためゲームが掲載されるかはすべてお客様(この場合はメディア)の判断となります。なので、「これを書けば必ず掲載される」とはいえません。

 それでも「こういう面白そうなゲームがある」というご提案は常に行っており、場合によってはそれが掲載につながることもあります。そのとき助けになるのがプレスリリースです。「こういう面白い人が作ってる」とか、いろいろ提案する手が増えます。

 ゲームを作る、完成させるというのはそれだけでもすごいことです。もうワンプッシュすれば、あなたの作品は多くの人に知られる機会が生まれるかもしれません。そのお手伝いができれば、筆者はとても幸せです。

事後検証

 公開後わずか数時間で予想以上の反応を頂き感謝の極みです。寄せられた意見を拝見しましたが、なるほどと思うことばかり。ゲーム作者の方からは「ゲームを見て欲しい」という至極もっともなご意見がありました。こちらはベストな答えはまだ出せないので、できる限り意識するということでご勘弁ください。

 また、バズらせられるかどうかはさておき、バズるタイミングも重要なことも確認。確かに一番良いタイミングはゲームのリリース時に話題になることですよね。リリースのはるか前では、肝心のリリースまでに忘れられている可能性があります。基本的に早め早めを狙うニュースという記事でも、これをしっかり意識しなければ……と。「Steamにページがオープンした」という瞬間より、「ゲームがリリースされた」という瞬間で周知されれば、そのままの風速でゲームを手に取る人も増えるはず。Steamはウィッシュリストがあるのでまだマシですが。

 SNS映えしやすいゲーム以外の周知方法も考えるべきですが、これは現時点でまったく想像つきません。私が書くニュースは事実を述べ、自分が面白いと思う部分をピックアップしてそこを押し出す方法を採っています。今のところはどのゲームでもそれ以上のことはできないし、上手くいかないこともあるという状態です。

 これらの意見とは無関係ですが、ゲームの広告戦術で大きなターニングポイントとなった『No Man’s Sky』のプロモーションは、期待を煽りすぎる宣伝を止めようという方向に向かったことも肝に銘じるべきですね。記憶している限り、E3やSteamでは実ゲームプレイが収録されていないトレイラーは掲載しない方針に変更になったはず。

 「嘘をつかない」、「誇張しすぎない」、「でも面白いと思うところは思いっきり前面に出していく」という今のスタンスを守りながら、1本でも多く売れ、ひとりでも多くの人がゲームをプレイしてくれるような情報を提供することを意識しようと思いました。

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