『アノマリス』デモ:「世界観や雰囲気”だけ”はいい」から、「世界観や雰囲気”も”いい」へ

結論から言うと発売日に買う。

フリューのゲームには一度も触れたことがない。それでも「第一線級ではないJRPGメーカー」という、根拠の薄い先入観だけは持っていた。

「世界観や雰囲気”だけ”はいい──で終わらせないために。」より

そんな会社がTPSを作り、しかも「世界観や雰囲気”だけ”はいい──で終わらせないために。」という意気込みまで見せたのだ。
シューター大好きとしては、ここまで宣言された以上、確かめないわけにはいかなかった。

体験版を最後まで遊んだ結果、その宣言は少なくとも空振りではなかった。
粗はある。それでも、先入観を覆すだけの魅力はあった。

「世界観や雰囲気“だけ”はいい」で終わってない

昭和が今なお続く日本で、異界を調査・管理する組織の一員として探索する。
SCPや『遺失物統轄機構』を思わせる題材ではあるが、その世界をゲームシステムとして実感させているのが本作の強みだ。

宣伝のためとはいえ、このクソダサバックパックだけはどうにかならなかったのか……。病院クリア後に別の装備に変更可能。

モデルの精細さは最新AAAには及ばないが、異界の見せ方は上手い。少なくともデモ版の病院は、現実からずれた空間の不気味さを十分に表現できている。

探索を進めるごとに現実がゆがんでいく。こういう描写は素晴らしい。

「異界調査」をゲームとして成立させる

ゲーム全体のデザインは、『Escape from Tarkov』が切り開いたエクストラクションシューターの要素を取り入れている。
一般的なエクストラクションシューターでは、死亡時の装備ロストと厳しいインベントリ管理が探索の緊張感を生む。

本作はその構造を大幅に簡略化している。各マップにはセーブポイントがあり、回収品もそこから本部へ転送できる。。死亡しても装備をすべて失うことなくコンティニューできるため、死の緊張感は薄い。

クリア後はここから脱出も可能。

デモ版の範囲では、エクストラクション要素は緊張感を生む仕組みというより、世界設定を支えるフレーバーに近い。だが、その軽さは欠点ではない。「異界で物資を回収し、組織へ送る」という任務に説得力を与えている。

実態はエクストラクションシューター風のルーターシューターであり、回収した物資は売却や装備強化に使える。探索と成長の循環も分かりやすい。

インジケーターがアイテムのある場所を示してくれる。わかりやすいし、何より世界観に合っているのが良い。

アイテムの位置をレーダーで探知する仕組みも、直接マーカーやハイライトを表示するより世界観になじんでいる。

設定だけでなく、探索・回収・強化というゲームサイクルまでが世界を裏付けているのだ。

オペ子最高!

ストーリー進行は立ち絵中心の会話パートとなっているが、個人的にはあまり好みではない。
それでもオペ子は最高だ。冷静主人公に代わって、戦闘中の空気を一手に引き受けている。

当初は虚勢を張って騒ぐだけに見えたが、後にオペレーターとして主人公を支える有能な相棒になる。

かわいい。

近くにアイテムがあれば教え、体力が減れば回復を促し、敵を倒せば喜んでくれる。銃を適当に撃っていると「無駄撃ちすんなよ」と言ってきたときは驚いた。

かわいい。

彼女は情報伝達と戦闘演出を担うだけでなく、「本部の支援を受けながら任務を遂行している」という実感を与えてくれる。

最初の任務で左足を失ったオペ子。「松葉杖生活」と言っていたが、松葉杖は見当たらない。気合いと根性で歩けるようになったのかも。

彼女の名は「紅田唯我」。名前を覚える気のない主人公の代わりに、名前を覚えておこう。

ボス戦は体験版最大の美点

本作のザコ戦は、あまり面白いと感じなかった。

敵は耐久力が高い割に、基本的には一直線に接近してくるだけ。狭い場所で大量に現れ、時には背後に敵が出現するため、高揚感より煩わしさが勝る。
パリィや体勢崩しを使いこなせば印象は変わるかもしれないが、少なくとも体験版ではザコ戦そのものの面白さは乏しかった。

しかし、ボス戦は一気に評価が変わる。

体験版のボスは、攻撃パターンを覚えながら弱点を破壊し、致命の一撃を狙うギミック戦だ。武器ごとの役割が明確で、局面に合わせて使い分けることが必要となる。

例えばサブマシンガンで飛来する攻撃を撃ち落とし、ショットガンで弱点を素早く破壊する。高火力武器一本で押し切るのではなく、武器の特性を攻略に組み込んでいる点がよくできている。

製品版では、装備を整えてから現場へ出動する準備段階も重要になりそうだ。どのような戦闘が起きるかを予測し、容量制限の中で装備を選ぶ下準備は、エクストラクションシューター由来の面白さになり得る。

ただし、潜入先の危険を事前に予測できなければ、結局はショットガン、サブマシンガン、ハンドガンという万能構成が正解になりかねない。
現場情報から装備を組み立てられるかどうかが、製品版の完成度を左右するだろう。

さらに敵の種類が増え、彼らへの対処にバリエーションが生まれてくればザコ戦の評価も大きく変わるはずだ。

気になった点

細かな改善点もそれなりにある。

  • グラフィックに比べて動作がやや重く、DLSSなどにも未対応
  • エイム操作をトグルと長押しで切り替えられない
  • クイックターンのキーを変更できず、しゃがみが誤爆しやすい
  • Escapeキーで戻れないメニューがあり、操作に一貫性がない
  • 武器変更のチュートリアルに数字キーの割り当てが表示されない

現在のカジュアルな設計は本作に合っている。一方で、任意の高難度モードとして、死亡時に持ち込み品をすべて失うルールも欲しい。

総評

体験版を遊ぶ前は、フリューを一線級の開発会社とは考えていなかった。

しかし、本作は異界調査という世界設定とゲームシステムの結び付き、武器の使い分けを軸にしたボス戦には確かな魅力があった。

「世界観や雰囲気だけはいい」で終わらせない。その宣言に、少なくとも体験版では偽りがない。

気になるのは、マップ数や探索の幅といった製品版のボリュームだ。それでも現時点では、発売日に買うつもりでいる。

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