今遊ぶ20年目の「Unreal」レビュー

当時の技術で作られた絵の具や技法が古いからといって名画が陳腐になるでしょうか?音楽は?文学作品は?そんなことはありません。ならばゲームはどうでしょうか。その答えはUnrealが握っています。
本稿は何故今このゲームをプレイするべきなのか、導入方法やゲームのアツい特徴の紹介を通じて特に未プレイの人に少しでもこの名作を届けることを目標にして書いていこうと思います。御託はいい!俺は今すぐUnrealがプレイしたいんだ!というナイスガイは本稿の一番下に現行システム向けの導入ガイドを載せています。

1998年ってFPSにとってどんな年?

今から20年前、1998年はFPSというジャンルにとって大きな躍進の年でした。有名なところでは前年にリリースされたBlood、Shadow Warriorを最後に高低差の概念の無い2.5D FPSは市場からほぼ姿を消します。その後もDuke Nukem 3DのBuild Engineをベースにしたゲームがリリースされますが、98年は市場のFPSが3Dへと置き換わった年と言えるでしょう。(余談ですがそれから20年経った今、Build Engineを使った”最新”FPSであるION MAIDENがアーリーアクセスでリリースされましたね。)

初の完全3D FPSであるQuake(96年)リリースからわずか2年で驚くほど広大なアウトドアマップを持ったFPSが登場したインパクトは今はもう想像か伝聞くらいでしか確かめようがありませんが、それから更に20年経った2018年に本作を遊んで果たして楽しめるのでしょうか?

惑星Na Paliを旅する

まずはなんと言っても人類とは全く違う歴史を歩むNaliの住むこの星こそ、Unrealが今でもプレイするべきと言える見どころのひとつです。墜落したスペースシップを脱出して初めて目にする広大な地上は今でもオールドゲーマーの語り草となっています。

他にも洞窟やエイリアンの宇宙船のようなゲーマーにとっては顔なじみのような場所から土着の信仰を司る寺院、まるで中世の城のような今でもかなり珍しい場所まで千差万別のロケーションが揃っています。特に前半から中盤にかけてのマップはプレイヤーにこの世界がどうなっているのかを示すため広大で立体的な構造が多く、同じマップの中ですらガラリと印象が変わるような場所も多く出てきます。音楽も非常に出来がよく、探索や戦いを大いに盛り上げてくれます。

この惑星の原住民であり、現在は侵略者に存在を脅かされているNali達は敵だらけのこの惑星で唯一プレイヤーの協力者です。力は弱く戦いに巻き込まれればすぐに死んでしまう彼らを守り抜けば隠し持つ武器やアイテムを提供してくれます。

彼らは独自の信仰を持ち、農耕や牧畜をして地球の中世に似た生活様式で生活する文化を持っています。遠く離れた異世界でも地球人と同じような生活を営んでいることに浪漫を感じませんか?……Unrealがもともと中世を舞台にしたファンタジー色の強いゲームだったからという無粋なツッコミはいけません。

世界の広がりを感じさせる広大なマップは良いことばかりではなく……

ゲームの進行は広いマップを歩き回りスイッチやレバーを探し敵モンスターを倒すことに終止します。最近のFPSに慣れた身の上としては「スイッチの場所や場合によってはスイッチ自体がまず分かりにくい」「更にそれが何と連動しているか分かりにくい」「マップの目標が示されない」等など……。今の感覚では不親切と言える謎解きの数々が登場するゲーム前半は、ロケーションの珍しさを差し引いても今プレイするとうんざりするかも知れません。ヒントとなる手記もありますが、だからといってそれを見てすんなり解けるようにもなっていません。Useキーを使わないゲームなので、怪しげなところには体当たりするというDoom時代に磨いたシークレットを探して怪しい壁全部スペース押すアレを思い出します。
ネット上には今でもウォークスルーが充実していますし、広大なマップを探検する楽しさがフラグを探し回る苦痛に置き換わってしまうくらいならさっさと見てしまった方が良いかも知れません。歯ごたえのある謎解きと言うよりは総当たりでフラグが立つまでマップを駆け回るといった趣が強くここはマイナスポイント。

特に古いFPSによくある気がするアスレチックマップや即死トラップのようなものは数少なくしゃがめば足場の端から落ちることは無いので、全体的に見れば緻密な操作が要求されるところは少ないです。狭い足場をジャンプで渡るような場面はほぼありません。しかしマップが広大なだけに高低差も大きく落下死やマップの端から溶岩に真っ逆さまなんてことはままあります。

生き残りをかけた激闘

Unrealの魅力はなんと言っても戦闘です。20年でグラフィックスが陳腐化した今でもこの部分は色あせない輝きを放っています。狙う、撃つ、避ける。今も昔も変わることのないFPSのコアであり、だからこそUnrealは20年経った今でもプレイする価値のあるゲームだと断言できます。
ドッジングで敵の弾をかいくぐりながら狙いをさだめて必殺の弾丸をブチ込む。Unrealの楽しさは原初のFPSの喜びに満ち溢れています。

戦闘は難易度ノーマルでも歯ごたえがあります。序盤からロケットランチャーをぶっ放す凶悪なモンスターが登場し、敵の弾を避けるだけでなく爆発物を相手に狭い場所で戦う際の間合いのとり方まで徹底的に教育してくれます。
Unreal TournamentといえばBotの動きがまるで人間のようだ、という話を聞いたことがある人も少なくないと思います。全ての始まりであるこのUnrealも敵AIの出来は卓越しています。登場するモンスター全体で見るとプレイヤーに向かってくるだけといった単純な動きしかしないモンスターはむしろ少なく、特に人型のモンスターはまるで意志を持っているかのような血の通った行動をしてきます。

行く手を遮るモンスターの中でもまさにプレイヤーのライバルと言えるのがこのSkaarjです。見るからに強そうなこの戦闘民族はゲーム序盤から登場し、Unrealといえばこのモンスターと言えるほど何度もプレイヤーと死闘を演じます。遠距離のエネルギー弾、一気に間合いを詰めてくる飛び込み、必殺の近接攻撃だけでなくプレイヤー同様ドッジングによる攻撃の回避すら行う強敵です。後半になればプレイヤーが使用する武器すら使いこなすSkaarjも登場し、彼らとの戦いは殆ど対人戦といってもいい出来になっています。

モンスターはただマップに存在してプレイヤーに向かって攻撃してくるだけではありません。こちらを確認するまではベッドで寝てたり仲間同士でクダを巻いていたり誰かの墓に向かって祈るような者もいて、彼らがただプレイヤーと戦うための舞台装置でなくそこに暮らす目的を持った住人であることがよく示されています。もちろんプレイヤーにとっては油断している彼らの背中はまさに恰好の的なわけですが。

マルチプレイについて

2018年現在でもマルチプレイサーバーはそれなりに立っています。しかし今あなたがやっている最新のマルチプレイゲームを捨ててUnreal Tournamentとして独立したコンテンツが発売されている中敢えてUnrealのマルチをやろうとはなかなか言えません。ただ、Coopもプレイできるのでゲームが気に入れば友達を誘って遊んでみるのもいいかも知れません。

サーバーの状況はこんな感じ。やはり古いゲームのマルチプレイは欧州が強いです。

20年目のUnrealの価値とは

Unrealは古く、その面白さについてはもはやおじさんに片足を突っ込んだか両肩までどっぷりと浸かった人々しか知らないでしょう。最新のゲームに比べればグラフィックスや不親切な謎解きは年老いたゲームにしか見えません。しかし老いてなお光り輝く部分があるからこそ、今なお名作として語り継がれSteamや様々なダウンロード販売サービスで売られ続けています。
それどころかかつて最高スペックPCでしか享受できなかったUnrealはその代名詞である高度なグラフィックスという枷から開放され、どんなPCでも動く今こそ自由に誰もがプレイできる普遍の名作へとその地位を高めたと言えます。
20年掛けて研磨され最後に残った美しい結晶を手にするのは今初めてプレイするプレイヤーと特権です。Unrealの異世界体験は今なお色褪せること無くあなたのゲーム人生に飾る一輪の花となるでしょう。

スコア:4点
  • 5点(人類誰しもが遊ぶべきゲーム)
  • 4点(ジャンルを代表する作品。そのジャンルに興味がなくてもゲームファンならオススメ)
  • 3点(そのジャンルのファンであればプレイ推奨)
  • 2点(そのジャンルをやり尽くし、ほかに探しているならプレイして欲しいゲーム)
  • 1点(誰にもオススメできないゲーム)

今から遊ぶUnreal

SteamGOGで何も考えずに買えます。ただし現行の最新バージョンである226は最新のPCシステムでは明るさを調整できないバグが存在しており、それを含めた現行システム向けパッチである227iがファンの手によって公開されています。今Unrealを手に入れる人は全員もれなくUnreal Goldなので「UnrealGoldPatch227i」と名前のついたファイルをダウンロードしましょう。拡張子は好みのものでOK。これを導入することでUIを含めた多くの部分が最新のシステムに最適化されます。新作を買ったらウェブサイトからパッチをダウンロードしてゲームに当てる……もはややったことがない人も多いかも知れません。0とOが見分けにくいCDキーを何度も間違えながら入力したり……。本当に便利になりました。

 

ダウンロードした圧縮ファイルを解凍した後中身のインストーラーを起動します。言語を選択した後購入したUnreal Goldのフォルダーを指定しますが、このインストーラーはUnrealのインストール先を探してくれません。なのでSteamならライブラリのUnreal Goldのプロパティを開いてローカルファイルを閲覧でインストールフォルダを開いて探すのが良いでしょう。SteamインストールフォルダsteamappscommonUnreal Goldあたりにインストールされているはずです。インストールした後初回起動時に今度はビデオドライバーが聞かれるはずですが、今ならDirect3D9を選ぶのが良いでしょう。サウンドドライバーはデフォルトのままでOK。

なお、ゲームのオプションはOptionの項目の中のPreferenceを選択します。

特に重要なのがVideo項目のFont SizeとTranslator Size。前者はこのメニュー画面の文字の大きさ、後者はゲーム中のログの大きさになります。特にトランスレーターはデフォルトだと小さすぎて読めないので2倍以上にすることを強く推奨します。Inputのマウススムージングを切ったりコントロールを好みに調整したらいよいよNa Paliです。
GameからNewを選んでゲームを始めましょう。Mutatorsの項目はいじらなくてOK。腕に自信があればより高い難易度も選べます。

ようこそPrisoner849。ゲームの導入に時間はかかりましたが、ようやくあなたの冒険が始まります。

今年で20周年FPSレビュー集リンク

「SiN」ゲーム開発の闇を背負った悲劇の良作 
「Blood II: The Chosen」 Monolithの荒々しくもつれた最初の一歩
「Shogo: Mobile Armor Division」 日米クールの融合が生んだ良作アニメFPS

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