クズにも英雄にも、新兵にも老兵にも物語があった。「Battlefield 1」レビュー

マルチプレイのBattlefieldという言葉が使えなくなって久しくなりました。未来の架空の戦場を描いてきたBattlefieldの最新作Battlefield Vは第二次世界大戦をベースに大胆な物語を表現しようとして一部のファンの反感を買いました。
 果たしてDiCEの開発者たちは史実を利用してただ自分たちの好みのストーリーを展開させたいメアリー・スーなのでしょうか?答えはこのBattlefield 1シングルプレイキャンペーンにあります。

BF4から続くあまり代わり映えのしないシステム

BF1のプレイフィールはBF4のそれを踏襲しています。拠点の点在するマップで敵をマーキングしながら裏をかき背後から暗殺するというファンには馴染み深いシステムになっています。第一次世界大戦を舞台にしているのでもっと映画のような派手なシーンが連続で登場するのかと思いましたが、どちらかと言えば静のイメージが強いゲームプレイです。もちろん緩急ありそこかしこで爆発が起き戦闘機械が縦横無尽に駆け巡るパートもありますが、全体としてみるとステルスパートが多くなっています。

 ステルスパートはそこまで難しくありません。ノーマルであれば敵の視認速度は遅く、たとえスポットしていない敵であっても物音に気がついたりプレイヤーが視界に入ると警告としてマーカーが出るので難度は低いと言えます。マップを探索しながら拠点の周りを回り少しずつ敵を減らしていく楽しさは、BFが頑なにこのシステムを取り入れ続けている理由になりますね。
  ステルス失敗後のプランBになると多少難しくなりますが、それでも詰みを感じる難しさはありませんでした。

 すでに敵と交戦状態にあるパートは基本的には直進して敵を倒し目的地に到達するもので目新しさはないものの、フロストバイトエンジンで再現される泥沼の塹壕戦や巨大な飛行船の内部のように目を見張るロケーションが多く、ゲームのハイライトになっています。こちらは歯ごたえがあり、前進しないと敵は無限に現れるのに先に行き過ぎると四方から敵の砲火に晒されすぐにゲームオーバーに。

戦争を終わらせる戦争を描く架空の「俺たちの物語」

BF1の物語は架空の、しかしあったかもしれない5篇の物語が紡がれます。戦争に従事した名前も残らない、しかし確かに歴史を作った「俺たち」は様々な語り口で彼らの戦争を描いていきます。

 世界中で戦った第一次世界大戦を再現するためにDiCEは個人が見た戦場を描く方法をとりました。これら個人の戦場はそれぞれ異なる語り口で描かれていきます。
 ただの車の運転手だった新人戦車兵の物語はまるで今戦場にいるように。
 詐欺師でギャンブラーの戦闘機乗りの物語は酒場(あるいはきっと刑務所)で自分の戦功を吹聴するように。
 戦争を嫌う老英雄の物語は死の直前につぶやく独り言のように。
 家族思いの志願兵の物語は過去を子や孫に伝えるように。
 そして復讐に燃える女兵士の物語は…アラビアのロレンスの自伝のように。
 ひとつひとつは短編ながら過去に終わった大戦がバラエティ豊かな語り口で描かれ、ゲームという娯楽のための物語ながら戦争の様々な側面を描くことに成功しています。

 特に出来がいいのがゲーム開始時(本当に開始時!)にプレイすることになる「鋼鉄の嵐」です。暗い塹壕で歩兵と戦車が入り乱れプレイヤーの視点も目まぐるしく変わっていくこのマップひとつにBF1のテーマが集約されていると言っても過言ではありません。史実の戦争を舞台にしたシューターはその多くが生者の物語です。それはBF1も変わりがありませんが、物語を紡ぐ間もなく死んでいった兵士たちの姿まで描いた本作は単なる娯楽アクションゲームのシナリオというにはあまりに美しく描かれています。

 残念な点をひとつ挙げるとすれば、そこに敗者の物語がなかったことです。世界中で戦ったのは何も勝利者だけでなく、敗者もそこで戦っていました。戦場を戦った「俺たち」の物語を描くための最後のピースがこぼれ落ちてしまったことだけは残念でなりません。

悲劇の史実に虚構を織り交ぜる意義、DiCEが目指した誠実さ

架空の舞台で架空の物語を描く場合、その物語は作者のものでしょう。では史実を舞台に描かれるフィクションは一体誰のものなのでしょうか?
 世界を巻き込んだ史実の大災厄を娯楽のために自分たちの作るフィクションを使って語るなら、そこにあるべきは誠実さの一点だと言えます。その出来事から何を学ぶのか、何を伝えるのか。戦争の勝敗ではなくなにかもっと小さくて重要なもののために戦っていた人々の姿を生き生きと描いた本作は、DiCEが史実を語るに値するデベロッパーであることの証明と言えます。

スコア:3点

  • 5点(人類誰しもが遊ぶべきゲーム)
  • 4点(ジャンルを代表する作品。そのジャンルに興味がなくてもゲームファンならオススメ)
  • 3点(そのジャンルのファンであればプレイ推奨)
  • 2点(そのジャンルをやり尽くし、ほかに探しているならプレイして欲しいゲーム)
  • 1点(誰にもオススメできないゲーム)

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