You are Empty、それはきっと当時のソビエトロシア

僕らは皆空っぽ

Stalkerが発売される約一年前、まだまだ東欧産のゲームがB級でイロモノばかりだったと思われていた時代のFPSです。
私はGamers Gateにて購入してからいまいちプレイする気が起きずに2012年まで放置していましたが、ふとしたきっかけでちょっとプレイしてみようと思いスタートしました。
現在はGamers Gateでの価格は10ドルです。

バックグラウンド・ストーリー

舞台はパラレルワールドの1955年、スターリンが存命しており(現実は53年没)ソビエトの共産主義の勝利を確実にするため、人民を超人へと進化させる(Great Transformation)電波を発信する電波塔を造りだした。
電波塔の実験のためにソ連のとある街が選ばれたが、実験は失敗、その街の住人の大多数が死に残りは殺人ミュータントへと変わり果てていた。

You are Emptyの主人公は共産党の高官だ。彼は仕事から帰る途中にトラックに轢かれて昏睡状態に陥っていた。
そのお陰でGreat Transformationの作用が及ばず、正気のまま悲劇の起きた都市の病院で目を覚ます。

主人公は混乱状態の都市からの脱出と、この悲劇の原因を探るために行動を開始する――

概要
2006年発売ということで、例えば4:3の解像度にしか対応していないことや最新のOSでのみ起きる不具合は特になさそうです。nVidia製VGAだと不具合が起きる場合があるそうですが、最新のグラフィックドライバー(Forceware 290.53)では特に問題はありませんでした。
Gamers Gate版はDRMにスターフォースを使用しています。

ゲームの設定を一度変更したら変えられなくなる不具合が最初から最後まで続きましたが、一応最初の一回目の起動で必要な全ての設定を変えられたのでそのまま続けました。1920*1080でプレイ。
ウインドウ表示も可能のようですが、私の環境ではメニューから変更しても全画面のままでした。

必要システム
Intel Pentium 2.4 GHz or AMD Athlon/Sempron 2500+ Processor
512 MB RAM
7.5 GB Hard Disk Space
GeForce FX 5600 or ATI 9600 128 MB Video Card
DirectX 9.0c compatible Sound Card

使用PC
Windows 7 x64 SP1
Intel C2Q 9550@2.83GHz
DDR2 8GB
GeForce GRX 560 Ti 1GB (FW290.53)
Creative Audigy 2

ゲームシステム
シングルプレイのみでマルチプレイは収録されていません。シングルの難易度はEasy/Norman/Hardの3種です。
クイックセーブ/ロードに対応していますがクイックロードに関してはあまりクイックとは言えないスピードでした。

コンパスのような次に向かうべき場所を示すツールはありませんが基本的に一方通行、詰まった場合も少し戻れば大体超えられるようなものです。
唯一どのドアが開くかわかりづらい点は改善の余地ありですが、モデリングが甘いのか隙間から向こうを見ることができるドアや窓から奥が見えるドアはたいてい入れます。
詰まったらレバー、鍵、バルブを探し全てのドアでUSEキーを押せばなんとかなります。

ゲーム中は様々なメモが手に入りそれを読むことで次に何をするか大体わかります。
が、読解の難しい筆記体の踊るメモなどを読めない場合も総当りで頑張ればクリアー可能です。
字幕は出ないので、ゲーム内での会話シーンは聞き取れなければ全く意味がわからないものになってしまいます。

特殊能力など目立った特徴もなく非常にスタンダードなFPSなので慣れている人は操作に戸惑うことは無いはずです。リーンや伏せは無くしゃがみのみ。
スプリントも歩きも無い上に主人公の動きがかなり鈍いので動きのすばやい敵からは基本的に逃げられません。

戦闘システム
武器はこれまたスタンダードなモノばかりで特に変な使い方をする武器は出てきません。
WW2で使われていたものが多く、見ればすぐに分かるはずです。

特徴的というか武器全体を通してわからないのが敵に対するダメージです。
同じ敵でもショットガンの至近距離からの射撃で全く死なない場合もあれば、中距離で瞬殺できることがあったり、ハンドガンで頭に4,5発当てても死なない敵の胴にめがけてハンドガンを2発撃てば倒せてしまったり。

ハンドガンを始めいくつかの武器はアイアンサイトがありますが、若干ズームがかかるどころか結構かかるので至近距離の場合役立たずです。
スコープ付きの武器は逆にあまりズームされません。

アイアンサイトなのかズームなのかわからないハンドガンのアイアンサイト

逆にPPShはきちんとアイアンサイトしています。マズルフラッシュが激しい!

グレネードがわりにモロトフカクテルがあるのですが、マウス押しっぱなしで遠くに投げることができ、ワンクリックでは足元に落ちて自殺してしまう使いにくい塩梅になっています。

唯一の未来兵器は未来を感じさせる出来ながら弾薬の手に入る量や弾速の遅さ、そしてスプラッシュダメージの大きさのせいで全く使えない武器となっています。

ヘッドショットなど部位ごとに異なるダメージが入るようですが、上記の通りこのへんが曖昧でよくわかりません。

体力は99が最大値でアーマーなどはなし。回復アイテムはノーマルだとかなり落ちていて基本的に死ぬことは無さそうな難易度調整です。
ただし敵の攻撃力は低くないので油断すると瞬殺される場合も。
また、弾薬や回復薬品は爆発や銃撃で壊れてしまいます。

音楽・効果音
戦闘中に流れるロック調の音楽はカッコいいのですが、なんとなくソビエトっぽくない感じでちょっと興がそがれる感じです。
ただ単純にその曲だけならカッコいいので、と言うよりそのかっこ良さがむしろその場面にそぐわない感じがしてなりません。
他の音楽に関してはあまり心に残るものはなかったように思います。

環境音はなかなか良く、敵の叫び声や足音、たまにどこからか流れてくるソビエトの曲なんかはその世界への没入感を高めてくれます。

銃の射撃音は特に耳ざわりな感じもなく画面の色彩と相まって静かなイメージを持たせる感じで可もなく不可もなくと言った感じでプレイを阻害する感じはありませんでした。

グラフィック
自社製のDS2エンジンを使用しています。
同年に発売されたA級ゲーム(OblivionやBF214)と比べるとかなり旧世代を感じさせるグラフィックです。
しかしどんよりとした当時のソビエト連邦の雰囲気を感じさせるに十分な説得力を持ったものになっています。
もちろん私は当時のソ連なんて想像のものでしかありませんが…。

ロケーションはどれもどんよりとした暗い雰囲気なのは共通していながらバリエーションに富んでおり、都市や地下鉄、工場に寂れた農場、オペラハウスや研究施設等があります。
広さを感じさせる様なマップは少ないものの狭い通路での戦いも開けた場所での戦闘もあります。

建物等のディテールはなかなかハイレベルなクオリティを見せていますが、逆に人間やモンスターなどはなかなか奇抜で楽しいデザインの敵が多いもののグラフィッククオリティは低くなっています。

総評
単純にFPSとして見るとYou are Emptyはあまりに平凡すぎるどころか退屈な出来と言えます。
モンスターの造形はオリジナリティを感じさせるし種類もプレイ時間にしては多めだと思います。
ただ非常に盛り上がりに欠けます。ド派手な武器や大迫力のボス戦や大量の敵のラッシュもありません。
主人公は終始淡々と先へ進み淡々と敵を処理し進んでいきます。
FPSとしてみた時、このゲームは本当につまらないゲームに映るでしょう。

見方を変えてこれをアドベンチャーゲームだと捉えてみると、少し違った面が出てきます。
このゲーム最大の特徴と言ってもいいマップ間ロードの前にたまに挿入されるムービーを鑑賞し、その世界やバックグラウンドを想像しながらプレイするのがこのゲームを楽しむ方法だと思いました。
ゲーム自体のストーリーは英語がわからないときちんと理解出来ないのですが、逆にこのムービーは会話らしい会話が出てこないものになっています。誰が見ても言語に左右されずにいろいろ想像させる構成です。
とてもネタバレしたい気持ちになりますが、アドベンチャーゲームとあればネタバレはご法度。ぐっと我慢します。

このゲームは間違いなくB級ゲームです。しかもFPSとして遊ぶには問題点が山積しています。
しかしこれをストーリーを語るためのツールとしてのFPSであると考えれば、なかなか興味深いゲームであることは間違いありません。
余韻を残して終わるラストは、最後まで暗くどんよりした雰囲気で淡々と進むゲームにふさわしいラストだと思いました。もちろん良い意味で。

後付
ストーリーの方はいくつかのサイトを見た感じミュータント化したのがソ連全体なのかある地域だけなのかよくわからないものになっていました。一応後者を採用していますが、wikipediaによると前者になっています。

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